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民法・相続法の概説

2025-01-06 12:13:57
2025-01-06 14:12:47
目次

相続開始の原因と場所

相続は被相続人(財産を遺す人)の死亡によって開始します。
死亡には自然死および失踪宣告が含まれ、失踪宣告の場合、法律上の死亡とみなされる時点は、普通失踪で7年間、生死不明が続いた場合、特別失踪で災害など特定の危難に遭遇したときから1年です。
相続開始の場所は、被相続人の住所地とされます。

相続回復請求権

相続権を侵害された相続人が、財産の回復を求める権利で、無効な遺言や偽造文書などにより相続家な侵害されば場合や相続人でない相続財産を不当に占有している者に対して行使されます。
消滅時効は、相続開始を知った時から5年、相続開始から20年です。

相続人

法定相続の範囲

法定相続人には、被相続人の配偶者と血族が含まれます。配偶者は常に相続人となります。血族相続人の優先順位は、直系卑属(子、孫など)、直系尊属(親、祖父母など)、兄弟姉妹の順となります。

欠格事由

相続人が被相続人を故意に殺害、または殺害未遂や遺言書の偽造、変造、破棄、隠匿などの行為を行った場合、相続権を失います。

推定相続人の廃除

被相続人が遺言で推定相続人を廃除することが可能です。廃除は家庭裁判所の許可を得て行われます。廃除事由には、虐待や重大な侮辱、著しい非行などがあります。

相続の効力

一般的効力

相続は、被相続人の財産に関する権利義務を包括的に承継します。ただし、被相続人に専属するもの(例:年金受給権、配偶者居住権など)は相続されません。

法定相続分

法定相続分は、配偶者と子供がいる場合に2分の1ずつ、配偶者と直系尊属がいる場合に3分の2と3分の1、配偶者と兄弟姉妹がいる場合に4分の3と4分の1と定められています。

遺言による相続分の指定

被相続人は法定相続分に優先して、遺言によって相続分を自由に指定できます。

特別受益者の相続分

特別受益とは、被相続人から生前に遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた財産を指します。相続分を算定する際、特別受益を考慮して調整されます。

寄与分

寄与分とは、相続人の中で特に被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産形成や維持に貢献した者に認められる追加的な相続分です。

遺産の分割

遺産分割基準

遺産分割は、共同相続人全員の合意に基づき行われます。合意が得られない場合、家庭裁判所が審判を行います。

持戻し

特別受益者がいる場合、その受益分を相続財産に持ち戻して計算します。

分割方法の指定及び分割の禁止

被相続人は遺言で遺産分割方法を指定できます。また、遺産分割を一定期間(5年以内)禁止することも可能です。

遺産分割前の預貯金債権の行使

各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の1/3に法定相続分の割合を乗じた額(ただし最高額は150万円)については、単独でその権利を行使することができます。

相続の承認及び放棄

単純承認

相続財産を無条件で承継する意思表示です。

限定承認

相続財産の範囲内でのみ債務を負担します。

相続の放棄

家庭裁判所に申述することで相続人の地位を放棄できます。放棄は相続開始を知った時から3ヶ月以内に行う必要があります。

財産分離

債権者や受遺者の保護を目的に、相続財産を相続人の固有財産と分離して管理する制度があります。

相続人の不存在

相続人がいない場合、相続財産は国庫に帰属します。ただし、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、そのた特別縁故者がいる場合は、その者に財産の一部または全部が分与されることがあります。

遺言

遺言の方式

遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。

遺言能力

15歳以上で意思能力を有する者が遺言を行えます。

遺言の効力

遺言は死亡時に効力を発生します。なお遺言者はいつでも遺言の方式に従ってその全部または一部を撤回することができます。また前の遺言と後の遺言が異なる場合、その部分については後の遺言が前の遺言を撤回したものと見なされます。

遺贈

遺贈とは、遺言書によって個人の財産を無償で譲ることで、財産を与える人を遺贈者、受け取る人を受遺者といいます。この遺贈には財産全体に対する割合で指定する包括遺贈と、渡す財産を特定する特定遺贈があります。なお相続とは違い、遺言書によって、相続人や特定の個人以外にも遺産を受け継がせることができます。

特別の方式

遺言者の死亡が迫っている場合や、一般社会と隔絶した環境にある場合など、普通方式の遺言ができない特殊な状況下で認められる方式です。ちなみに遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになった時から6ヶ月間生存するときは、その効力を生じません。

 

遺言の執行

検認

検認とは、遺言書の存在や内容を相続人に通知し、遺言書の形状や加除訂正の状態、日付、署名などを記録して、偽造や変造を防止するための手続きであり、遺言書を預かっていた者や発見した相続人は家庭裁判所に検認を申し立てる必要があります。
ちなみに遺言書の有効・無効を判断する手続きではありません。
また公正証書遺言や法務局における遺言書保管制度に基づき法務局に保管されている自筆証書遺言については、検認は必要ありません。

遺言執行者

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う者で、遺言者が亡くなった後に、相続財産の管理など遺言書に記載された内容を執行する役割を担います。
なおこの遺言執行者は遺言者が遺言書で指定する方法と、利害関係人が家庭裁判所に申立てて選任する方法があります。

 

配偶者居住権

配偶者居住権とは、配偶者が相続開始後一定期間、被相続人の居住建物に無償で住み続ける権利です。
成立要件として、法律上の配偶者が相続開始時に被相続人が所有する建物に居住していたこと、遺産分割、遺贈、死因贈与のいずれかにより配偶者居住権を取得したことの2点を満たす必要があります。
この配偶者居住権は譲渡することができず、配偶者の死亡とともに当然に消滅するため、相続の対象にもなりません。

存続期間

配偶者の存続期間は、配偶者の生存期間。但し遺産分割協議や遺言で定められた場合はその期間となります。

登記

居住建物の所有者は、配偶者に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負います。これにより配偶者居住権を第三者に対して対応することができます。

使用及び収益

配偶者は、居住建物を使用し、収益を得る権利を有します。但し、第三者に居住建物を使用または収益させるときは、所有者の許諾を得る必要があります。

遺産分割時の優遇

婚姻期間が20年以上の夫婦の一方の配偶者が他方に対して、その居住建物または土地の遺贈または贈与をした場合、相続財産の持戻し免除の意思表示の推定により、当該建物または土地は特別受益として扱われないため、配偶者の遺産分割における取得額は増えることになります。

 配偶者短期居住権

配偶者短期居住権は、配偶者が相続開始後一定期間、被相続人の居住建物に無償で住み続ける権利です。期間は遺産分割が確定するまで、または相続開始から6ヶ月間のいずれか遅い方です。
この短期居住権も一身専属権であり、他人への譲渡はできず、相続の対象にもなりません。また配偶者居住権と異なり、使用権限のみで、収益権限は認められておりません。登記をすることもできません。

 

遺留分

遺留分とは、一定の相続人(遺留分権利者)について、被相続人の財産から法律上取得することが保障されている最低限の取り分のことで、被相続人の生前の贈与又は遺贈によっても奪われることのないものです。遺留分の権利は直系卑属、直系尊属、配偶者に認められ、相続人が直系尊属のみの場合は法定相続割合の1/3、それ以外の場合は1/2となっております。
この遺留分を侵害した贈与や遺贈などの無償の処分は、法律上無効となるわけではありませんが、遺留分権利者が遺留分侵害額請求を行うことで、侵害者から金銭で遺留分を返してもらうことができます。ただしこの請求権には時効があり、相続開始と遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったときから1年、相続開始から10年となっています。
なお遺留分を放棄するには家庭裁判所の許可が必要です。

 

特別の寄与

被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(特別寄与者)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払を請求することができます。

この記事を書いた人

yushikurasono