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請負契約の適正化

2024-10-19 11:40:47
2025-01-04 09:44:10
目次

建設業は元請業者が工事を受注し、その一部を下請業者に委託する仕組みで成り立っているため、双方の関係が適正であることは、工事全体の品質や安全、円滑な遂行の観点から非常に重要なことです。

今回は、適正な元請業者と下請業者間の取引についてみていきたいと思います。

 請負契約の書面化義務

一般的に請負契約は諾成契約であり、口頭での契約は有効です。しかしその場合、不明瞭になりやすく、後にトラブルが生じる原因となるため、契約内容を明確にした書面を作成することが義務付けられています。具体的には、以下の15項目を契約書等に記載し、署名または記名押印して取り交わすこととなっています。

  1. 工事内容

  2. 請負代金の額

  3. 着工、完工の時期

  4. 工事を施工しない日や時間帯の定めをするときはその内容

  5. 前払金、出来高払の時期、方法

  6. 設計変更、工事中止などの場合の工期変更、代金額変更、損害負担とその算定方法

  7. 天災その他不可抗力による工期の変更、損害負担とその算定方法

  8. 価格変動による代金額、工事内容の変更

  9. 第三者が損害を受けた場合の賠償金負担

  10. 注文者からの支給材料、貸与品の内容、方法

  11. 工事完成検査の時期、方法、引渡し時期

  12. 完成後の代金支払い時期、方法

  13. 契約不適合責任、責任履行に関する保証保険契約などの内容

  14. 履行遅滞など債務不履行の場合の遅延利息などの損害金

  15. 契約に関する紛争の解決方法

 不当な変更や追加工事の防止

元請業者が一方的に工事の内容や条件を変更することは、下請業者に対して大きな負担を強いることになりかねません。そのため工事の進行中に設計変更や追加工事が必要になる場合、原則、元請業者は下請業者と合意の上で変更内容を決定し、その代金や工期を含め書面にて再契約を行うこととなります。

 不当に低い請負代金の禁止

注文者や元請業者はその取引上の地位を不当に利用し、その工事に通常必要と認められる原価に満たない額で請け負わせてはならないことになっています。ただしいわゆる買い手市場といわれる状況において市場価格そのものが原価を下回った場合など、建設業法違反にならない可能性がある場合もあります。

 不当な下請代金の減額

元請業者は正当な理由がないのに下請契約の締結後に下請代金の減額をすることは不公正な取引方法にあたるとされています。

不当な使用資材などの購入強制の禁止

注文者や元請業者はその取引上の地位を不当に利用して、請負契約の締結後に受注者が使用する資材、機械器具などやその購入先を指定し、受注者の利益を害することは建設業法違反になります。

著しく短い工期の禁止

注文者や元請業者はその注文した建設工事の施工に通常必要と認められる期間と比べて著しく短い工期での請負契約を締結してはならないとされています。

見積作成時の留意点

  • 見積書の作成・交付

請負契約締結にかかる建設業者の努力義務として材料費、労務費などの内訳を明らかにして見積を行うこと、工事の工程ごとの作業やその準備に必要な日数も明らかにすることとされています。

  • 見積期間の設定

注文者や元請業者は入札や随意契約の前に、工事内容、工期、工事を施工しない日や時間帯を定めるときはその内容など14項目(請負契約書15項目のうち「請負代金の額」以外)を見積条件として、できるだけ具体的に示して、一定の見積期間を設けなければならないとされています。この一定の期間とは、契約内容を提示した日と契約締結日を除き、500万円未満であれば中1日以上、5000万円未満であれば中10日以上、5000万円以上は中15日以上となります。

 情報の提供

注文者は、地盤沈下や地下埋蔵物による土壌汚染のように工期や請負代金額に影響を及ぼす事象の発生する恐れがあると認められるときは、契約締結前に相手方にその状況把握のために必要な情報を提供しなければならないとされています。

 一括下請の禁止

建設業者がその請け負った建設工事を別の建設業者に丸投げすることは、発注者の信頼を裏切ってしまうこと、中間搾取や工事の質の低下、労働条件の悪化責任の不明確化を招きかねないこと、工事施工能力のない不良業者が横行しかねないことから、一括下請負は禁止されています。なお発注者の承諾を得た場合は適用されませんが、公共工事や民間工事のうち多数の者が利用するマンション等については全面的に禁止されています。この一括下請けとは工事の主たる部分を下請けに出し、実質的に関与していない場合です。

 完成検査と引渡し

元請業者は下請業者から完成通知を受けた日から20日以内に、できるだけ早く工事完成検査を完了させなければならない、そして完成検査によって建設工事の完成を確認した後は、下請業者の申出によりただちに目的物の引き渡しを受けなければならないとされています。

 請負代金支払い上の留意点

  • 下請代金の支払い

元請業者が注文者から出来高部分に対する支払、工事完成後の支払いをうけたときは、その支払いの対象となった建設工事を施工した下請業者に対して相応する下請代金を1月以内に、かつできるだけ早く支払わなければならないとされています。

なお特定建設業者について、下請代金の支払期日は目的物引渡しの申出の日から50日以内で、かつできるだけ早く定めておかなければなりません。そして代金の支払いは申出の日から50日以内と発注者から支払いを受けた日から1月以内のどちらか早いほうで支払わなければならず、これらの支払期日までに支払われなかったときは、年14.6%の遅延利息を日割りで支払うこととされています。

また元請業者には下請け代金のうち労務費相当分については現金で支払うよう配慮すること、一般の金融機関による割引を受けることが困難(手形期間120日を超えないことは当然、将来的には60日以内とするよう努めること)な手形で行ってはならないとされています。

  • 前払金を受けたとき

元請業者は注文者から前払金を受けたときは、下請業者に対して、建設工事の着手に必要な費用を前払金として支払うよう適切に配慮しなければならないとされています。

注文者は500万円未満の軽微な工事等を除き、請負金額の全部又は一部を前金払いする際は建設業者に対して保証人を立てることを請求することができるとされています。

 まとめ

建設業法における請負契約の適正化は、発注者と元請業者、下請業者との取引が公正かつ円滑に行われることを保障するための重要な仕組みです。請負契約を明文化し、適切な支払いを確保し、不当な取引条件を防止することで、建設業界全体の健全な発展が促進されます。

建設請負契約における適正な取引にかかるご不明点などございましたら、お気軽にご相談ください。

本記事へのお問い合わせは新名古屋・建設業許可手続きサポートまでよろしくお願いします。

この記事を書いた人

yushikurasono