建設業において、技術者は工事の品質や安全を担保するための重要な役割を果たします。技術者制度は、建設工事を実施するために必要な専門知識や技術を持つ人材を配置し、工事を適正に遂行できる体制を整えることを目的としています。
今回はこの技術者制度についてみていきたいと思います。
技術者の役割
配置技術者の資格要件
技術者の配置基準
配置技術者の現場専任制度
技術者の役割
営業所専任技術者
建設工事に関する請負契約の適正な締結やその履行を確保するために置かれるもので、常時その営業所に勤務し、専任で置くこととされている、建設業許可の要件にもなっている技術者です。
配置技術者:主任技術者・管理技術者
元請業者や下請業者が建設工事を行う際、以下に示す工事の品質や安全に直接関わる重要な役割を担う者として、工事の施工における技術的な指導や監督等を行うために工事現場への配置が義務付けられている技術者です。
施工計画の作成:請け負った建設工事全体の施工計画と管理
工程管理:工事の進捗確認、下請間の工程調整、工程会議の開催・参加、現場巡回
品質管理:下請けからの施工報告・確認、現場立会いや事後確認など
技術的指導:法令遵守や職務遂行状況の確認、現場作業にかかる実地の技術指導
配置技術者の資格要件
配置技術者として認められるためには、一定の資格や経験が必要です。これには、技術者が担当する工事の種類や規模に応じた資格要件が設けられています。具体的には、以下のような資格や実務経験が必要とされています。
主任技術者:一般建設業の許可のため営業所に置く技術者と同じ
当該建設工事の種類に応じた関連学科の高校卒業後5年以上又は大学卒業後3年以上の実務経験者
当該建設工事の種類に応じた10年以上の実務経験者
それらと同等以上の知識、技術、技能があると国土交通大臣が認定した者(当該建設工事の種類に応じた一定の資格取得者など)
監理技術者:特定建設業の許可のため営業所に置く技術者と同じ
当該建設工事の種類に応じた高度な技術検定合格者、免許取得者(1級の技術検定合格者、技術士など)
主任技術者の要件に該当し、かつ当該建設工事の種類に応じて元請として4500万円以上の工事を2年以上指導監督した実務経験者
それらと同等以上の能力があると国土交通大臣が認定した者
なおその特定建設業が指定建設業(土木工事業、建設工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、電気工事業、造園工事業)である場合は高度な技術合格者・免許取得者あるいはそれと同等以上の者のみが監理技術者となることができます。
また上記要件のほかに建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあること(公共工事の場合は入札の申込みより遡って3ヶ月以上の雇用関係があること)、監理技術者資格者証(有効期間5年)の交付を受け、監理技術者講習を受講していることが求められています。
技術者の配置基準
建設業法では、工事の種類や規模に応じて、適切な技術者を配置することが義務付けられています。技術者の配置基準は、工事の内容や発注者との契約形態によって異なります。
主任技術者
元請・下請業者が下請契約の請負代金総額が4500万円未満(建築一式工事の場合7000万円未満)となる工事もしくは公共性のある工事を行う場合
監理技術者
元請の特定建設業者が当該工事を施工するために締結した下請契約の請負代金総額が4,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上)になる場合
配置技術者の現場専任制度
公共性のある工作物の重要な建設工事については、原則として工事現場ごとに専任とすることになっています。
公共性のある工作物の重要な建設工事:請負金額4000万円以上(建築一式工事の場合は8000万円以上)のものが対象となります。
専任:他の工事現場に係る職務を兼務せず、常時継続的に当該工事現場にかかる職務にのみ従事しているということです。
なおその工事現場ごとに監理技術者補佐(1級の技術検定の第1次検定に合格し、主任技術者になることができる者)を専任で置く場合、監理技術者は2つの工事現場を兼務することができるようになりました。
また密接な関係にある2以上の工事を同一又は近接した場所で施工する場合、主任技術者の兼任も認められるようになりました。
密接な関係にある工事:施工にあたり相互に調整を要する工事( 2つの現場の資材を一括で調達し、相互に工程調整を要するもの、相当の部分の工事を同一の下請業者で施工し、相互に工程調整をようするもの)
近接した場所:工事現場の相互の間隔が10km程度
まとめ
建設業法における技術者制度は、工事の品質と安全を確保するために欠かせない仕組みです。技術者の配置により、工事が技術的に適切に遂行されることが保証され、業界全体の信頼性が高まるとともに、技術者の資格や経験が厳格に管理されることで、無資格者による不適切な工事を防ぎ、工事の安全性が確保されます。
建設業者にとって、技術者を育成・確保することにより技術力や信頼性の向上が図られることとなり、より規模の大きな工事や公共工事への参画機会にもつながります。
技術者の資格要件や配置についてご不明点などございましたら、お気軽にご相談ください。
本記事へのお問い合わせは倉園行政書士事務所までよろしくお願いします。