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建設業法は、建設業における適正な業務運営と安全性、品質の確保を目的として定められた法律です。法令遵守は、建設業者が法的規範に基づいて事業を遂行するために欠かせない要素であり、違反した場合は罰則や監督処分等が科されます。また、建設工事を進める過程で発生する契約上のトラブルや紛争を円滑に解決するための仕組みも重要です。

今回は建設業法にかかる法令遵守と紛争解決についてみていきたいと思います。

 

  • 法令遵守(コンプライアンス)の意義

  • 法令違反に対する処分等

  • 紛争解決のしくみ

 法令遵守(コンプライアンス)の意義

建設業法における法令遵守は、建設業者が法律や規則を守り、公正で適正な事業運営を行うことを意味します。建設業は、公共性の高い業務を多く含み、社会的責任も大きいため、法令遵守は極めて重要です。特に公共工事に関しては、工事の品質、安全、納期、コスト管理などが厳しく求められ、法令に基づいた適切な事業運営が求められます。

  • 建設業の許可制度:建設業を営むためには、建設業法に基づく許可が必要です。許可を受ける際には、資本金や技術力、経営基盤などの要件を満たすことが求められます。許可を取得していない業者が建設業(軽微な工事を除く)を営むことは違法となります。

  • 請負契約の適正化:発注者と元請業者、下請業者の間において、法令遵守に基づく適正な契約の締結が重要です。不当な下請け代金の削減や短工期、書面によらない契約などが行われた場合、発注者や元請業者は処分されることがあります。

  • 技術者制度:専任技術者や配置技術者は工事の品質と安全を確保するために欠かせません。よって不適切に技術者の配置や資格・経験管理が行われた場合、処分されることがあります。

  • 経営事項審査と公共工事入札制度:公共工事を受注するためには、経営事項審査(経審)を受け、一定の評点を得なければなりません。虚偽の申請や不正行為が行われた場合、処分されます。

 法令違反に対する処分等

【監督処分】

建設業法及び入札契約適正化法(入契法)に違反すると、建設業法上の監督処分の対象となります。処分内容は監督行政庁(国土交通大臣、都道府県知事)により官報や公報にて公告されるとともに、国土交通省や都道府県に備えつけられている建設業者監督処分簿にて公衆の閲覧に供されます。

  • 指示処分:法令違反や不適正な事実を是正するために、建設業者がすべきことを監督行政庁が命令するものです。なお他の法令違反し、建設業者として不適当と認められる場合や請負契約について不誠実な行為をした場合、技術者による工事施工管理が著しく不適当な場合なども、処分の対象となります

  • 営業停止処分:指示処分に従わない場合、一括下請の禁止規定違反は独禁法、刑法など他の法令に違反した場合に処分の対象となります。

  • 許可の取消処分:不正な手段で建設業の許可を受けた場合や営業停止処分に違反して営業した場合など、特に情状重い法令違反の場合に処分の対象となります。

監督処分に至らない場合であっても、行政庁は必要があると認めれば、建設業者に対する業務や施工状況にかかる聴取や立ち入り検査や、指導や助言、勧告が行われることがあります。また建設資材の欠陥に伴う施工不良にあって、建設業者のみでは再発防止ができない場合は、そうした資材製造業者等に対して勧告等がなされることもあります。

【独占禁止法違反による公正取引委員会への措置要求】 

不公正な取引として独占禁止法に違反する事案について、監督行政庁は監督処分ではなく、公正取引委員会に措置要求をすることができるとされています。そして公正取引委員会より確定命令を受けると無過失の損害賠償責任を負うことになります。

なお不当に低い請負代金での契約や不当な資材などの購入の強制、下請代金の未払いや割引困難手形の交付、完成検査や目的物引渡しの遅延、不利益な取扱いが不適正な取引にあたります。

【罰則】

建設業法は、下記にかかる行為者のみでなく、建設業者にも最高1億円の罰金刑が科される両罰規定となっています。

  • 3年以下の懲役または300万円以下の罰金

建設業許可を受けずに建設業を営んだ者、特定建設業者ではないのに一定額以上を下請けに出した者、営業停止処分に違反して営業した者など

  • 6月以下の懲役または100万円以下の罰金

許可申請書や経営事項審査申請書などを虚偽記載して出した者など

  • 100万円以下の罰金

配置技術者を置かなかった場合、立入検査を拒み、妨害した者

  • 10万円以下の過料

営業所や建設現場に標識を掲示しない者、帳簿を備えつけない、虚偽記載をした者

  紛争解決のしくみ

【建設工事紛争審査会】

建設工事においては、代金の支払いや契約解除などの契約上のトラブルや瑕疵のような技術的な問題が発生することが少なくありません。

建設業法にはこうした建設工事の請負契約に関する紛争を簡易・迅速・妥当に解決のため、裁判所を通じた法的手続き以外のものとして、法律や建築、土木等の専門家にて構成される建設工事紛争審査会(紛争審)というものがあります。

この紛争審は、準司法的機関(ADR(裁判外紛争処理)機関)であり、国土交通省に中央建設工事紛争審査会が、各都道府県に都道府県建設工事紛争審査会が設置されています。

なお紛争審で取り扱われる事案は、当事者の一方又は双方が建設業者において、工事の不適合などの「工事請負契約」の解釈又は実施をめぐるもの、かつ直接の契約当事者の間の紛争です。

 【紛争解決の方法】

紛争審による解決方法には「あっせん」、「調停」、「仲裁」の3種類があり、当事者は事件の内容、解決の難しさ、緊急性などにより、いずれの手続によるかを選択して申請することにより手続きが開始されます。なお、「仲裁」を申請するためには、当事者間で「仲裁合意書」が作成されていることが必要です。また審査会の行う「あっせん」、「調停」、「仲裁」の手続は原則として非公開となっています。

  • あっせん・調停:審査会が仲介し、当事者の歩み寄りによる解決をめざすもので、技術的・法律的な争点が少ない場合があっせん、多い場合は調停となる。

  • 仲裁:審査会が裁判所に代わって判断を下すもので、この判断には裁判所の確定判決と同じような効力があります

 まとめ

建設業法における法令遵守と紛争解決の仕組みは、建設業界の信頼性を支える重要な柱です。法令遵守は、適切な事業運営を確保し、公共工事や民間工事の品質と安全性を維持するために不可欠です。そして紛争が発生した場合には、迅速かつ円滑に解決するための調停や仲裁、裁判外紛争解決手続き(ADR)などの手段が整備されています。これにより、建設工事のトラブルを最小限に抑え、公正で安全な業務運営が実現されます。

また法令遵守を徹底し、紛争を未然に防ぐためには、契約内容の明確化や元請・下請間の適切なコミュニケーション、適切な技術者の配置、コンプライアンス研修の実施などが有効だと考えられています。

コンプライアンス対応に取り組まれている、あるいはこれから取り組もうとされている事業者様におかれましては、体制整備や研修など、ご遠慮なくご相談ください。

本記事へのお問い合わせは新名古屋・建設業許可手続きサポートまでよろしくお願いします。


 

この記事を書いた人

yushikurasono